「あっちぃー!!」
バンコクに降り立ったオレ達は、初めて海外に来た感動などは2秒で脳裏から消え去り、暑さで早くも狼狽していた。
日本では数週前にはまだ雪も降っていた2月。しかしこの東南アジアの摩天楼都市は平均湿度が76%、最高気温34度、最低気温27度という強烈な熱帯モンスーン気候。
空港を歩いていてすぐに目に飛び込んでくるのは、ベンチに今にもとろけそうな顔をして寝そべっているタイの従業員。予め断っておくが、この国には職務に従順な人間など1割もいやしない。これは誇張でもあてこすりでもなんでもなくて、タイに行ったことのある人間なら誰もが頷いてくれることであろう。
国が違うだけでこれほど違うのか…と困惑し、バスターミナルでさまようオレ達。
そこへ、筆舌不可能なレベルでうさんくさいオーラを放っている華僑風のババアが登場。片言の日本語と怪しい英語を巧みに織り交ぜながら、頼みもしないオレ達を誘おうとする。
「コンニチハー! マイ フレンド!! タクシーあるよ!! ゴー ツー バンコク!?」
一瞬で身の危険を察知したオレ達は、バスで行きたいという旨を伝えて足早に立ち去ろうとする。
しかし逃げ道をふさぐようにこの女は執拗に俺たちに付きまとってくる!!
「バス 暑い!! タクシー クーラー カイテキ!! お得!! オトクーー!!」
「しつけーったい!! オレ達はオレ達なりの旅を楽しもうとしてんの!! ウィー ウィル エンジョイ トラベル バイ オレたち!! 分かったとや!!」
オレのこの切迫した防衛本能からとっさに吐き出した言葉も、この華僑ババアは数秒間 嘲笑的な笑みを見せた後、何事も無かったかのように受け流して食い下がってくる!!
「一人 150バーツ オーケー!? 安し ヤスシ!!」
相手に考える隙も与えないこの段階攻撃に、なす術もなく譲歩してしまうオレ達。
「一人150バーツなら5,6百円ってことやろ? まあ……、いいっちゃない? お、オッケー!」
すると、コオロギ並みの知性しか持ち合わせていないようなアジア人2人と合流させられるオレ達。どうやらこいつらも同じ条件を呑んでいたようだ。
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