タイ廃人道中 Part6 ~カオサン通りのカマキリ男~


どうしていいかも分からず路頭に迷い屋台街に潜入してみるオレ達。偽ブランドがひしめく露店や、バーでタイのチャカチャカしたポップスに合わせて踊り狂う欧米人、堂々と往来のど真ん中で寝そべる薄汚い大型犬などを物珍しげに眺めていると、不安も忘れてオレ達も自然に陽気になっていった。

「すげー!!祭りみたいやん!!しかもこれが毎日続くっちゃろ?」

「やばいね!!世界中のバックパッカーが集まるのも分かるわー!!」

カオサン通りらへん


異国の熱気、独特な香辛料の鼻をつく香り、そしてマッサージ嬢の拙い日本語での客引きなどに興奮しきっていたオレ達はどんどん奥まで歩を進める。

「あれ……? なんか……ちょっとヤバい?」

最深部付近まで何の躊躇もなく吸い込まれていったオレ達は、あたりの様子が一変したことにようやく気がついた。タトゥーとピアスに身を包んだへビィメタルのボーカルのような白人、なぜか片手のないオッサン、痩せ細り目に生気のかけらも窺えないジャンキー、ラジオを大音量で鳴らして車の荷台でたむろするバンコクのチーマー。

本能的に足早になるオレ達。ギラギラした目でオレ達を見つめる捕食者たちの眼光を背中に感じながら、なんとか大通りへと転がり出た。 (バンコクの闇を垣間見た感じでした…。)


何だかひどく居た堪れない違和感を感じたオレ達は、タクシーを拾いホテルへ向かうことにした。パッションピンクのタクシーを止めて、カマキリを無理やり擬人化させたような運転手の男に行き先を告げる。

タイ語でたたみかけられたのでよく意味は分からなかったが、全力で意訳すると、
「知ってる知ってる!! 目にも留まらぬ速さで行ってやるぜ!! オレに任せとけ!!」 
みたいなことを言っているように感じられたので、乗車。

しかし、テキトーに車線変更を繰り返し、極度に挙動不審になり始めたこのカマキリ男。

「本当に分かっとうとかいな!!?  なんかさー、こいつテキトーに降ろして『ここがお前らの目的地だ!!』とかいって逆ギレしてきそうやない!!??」

「おい、わかっとうとや!!? ユー リアリー アンダスタンッ!!?」

「アイノウ!! アイノウ!! アイノーーーーウッ!!!!!」 

案の定 キレはじめたカマキリ。 
なあ、自分の子供と同い年ぐらいのガキに指図されてムカつくのはオレ達もよく分かる。
だがな、おまえがグズグズしてる間にもメーターは上がり続けてんだよっっ!! どうすんだよこれっ!!!

バックミラー越しに敵意をありありとにじませてカマキリを睨み続けるオレ。
すると、変に物憂げな表情を垣間見せ、委縮するカマキリ。 泣きたいのはこっちの方だっつーの!!

ようやく観念したのか、タクシーの運転手がたむろする場所へ車が止まった。ドアの窓をこれでもかと言わんばかりにダルそうに溜息まじりで開き、猫のようなか細い声で仲間に助けを求めだすカマキリ。

しかし、仲間は地図を見るなり5秒で場所を察知する。

・・・・・・

・・・・・・・・・・・。

「なーんだ、あそこのことかぁーー!! もうちょっとわかりやすく言ってくれよなぁー!! えへへ……え? 」 

バツの悪い感じを強引に振り払おうと、急に勢いづくカマキリ!!
もういい、頼むから早く先を急いでくれ……。



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