カマキリ男にメーター通りの額を支払った後(言い争う気も起きなかったオレ達の気持をぜひとも察していただきたい!!)、無事ホテルに到着したオレ達。ゲロまずいウェルカムドリンクを一気に飲み下して、荷物を置き、在留外国人のひしめく国際色豊かなアソーク駅周辺へと繰り出す。
新奇な感動をもって街を歩くオレ達。屋台やバーの旨そうな匂いに惹かれながら一際繁盛している通りを発見!!このエリア有数の歓楽街、ソイカウボーイだ。
4つ打ちのダンスミュージックが辺りも気にせずフルボリュームで鳴り響く。所狭しと重なり合うようにひしめくネオンサイン。すっかり酔っ払ってまどろむ間抜けな白人たち。椅子に全力でへばり付きながら声をかけてくるゴーゴーバー嬢。意気揚々と路上を闊歩するエロ日本人親父ども。ハエのように執拗に付きまとってくるバイクタクシーの運転手。
目が眩むほど強烈な異次元の欲望渦巻く世界にすっかり面くらったオレ達は、一軒のイタリアンレストランで夕食をとることにした。
「フュイーン!! フュイーン!!」
パスタとマルゲリータを完食し、ビールを片手に互いに労をねぎらいながら酔っぱらうオレ達。タバコを吸いながらテラスで談笑してると、なにやら聞きなれない、今にもぶっ壊れそうな空調装置のような奇怪な音が接近してくる……。
正直、もう何が来ても驚くつもりはなかった。それほどまでに喧噪で強烈なこの街に、これ以上何が待ち構えているというのだろう?
今更ダルさをどう隠そうともせず、おもむろにそちらへ目を向けてみるオレ達。しかし、一瞬で自分たちの想像が甘かったことを理解し、目を丸くする!!
ゾウであった!!奇怪な音と、凶悪な臭気を放ちながら、大都会の狭い路地裏を無理やりねじ行ってくる不潔な巨大生物!!すると、悠然とタバコを吸いながらゾウにまたがる男が、エサを買わないかと誘ってくる!!
「エサっ!?? ふざけんなっっーー!! こっちはメシ食いようったい!! さっさと離れろ!! くせぇーったい!!!」
全身全霊の日本語でゾウを追い払ったオレ達。さらに後続してきたゾウに辟易しながら逃げ去るように店を後にした。
車が猛スピードで駆け抜ける路地で、悠然と歩を進めるゾウ
ホテルに無事避難してきたオレ達は、息をつく間もなくベッドに横たわる。
一歩街へ出るたびにこれである。日本で平たんな毎日を無為に過ごすことに慣れ切っていたニート同然のオレ達は、殺人的な暑さと予測不能のハプニングに揉みくちゃにされながら当惑しきっていた。
「で、今回のテーマ何にする?」
ふと思いついたように尋ねてくる○山。オレの口をついて出た言葉は
「負けない!!」
疲労困憊し、憔悴しきっていたが、言葉が全く通じない異国でなんとか上手くやれている自分たちへの満足感と、まだ知る由もないトラブルへの冒険的な期待感、困惑しつつも次々に浮かんでくる興奮的な情念にオレ達は胸を落ち着かせることができなかった。
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