タイ廃人道中 Part8 ~とぅくとぅく~


翌朝、何も考えずに10時まで眠り呆けていたオレ達はようやく重い腰を上げた。とりあえず朝飯がてら近くの『シーフードマーケット』というレストランに行ってみることに決定。

そんなに遠くなかったので散歩しながらいこうとしていたが、あまりの暑さに200mほどで断念。トゥクトゥクを止める。

ちなみにトゥクトゥクというのは改造オート三輪のことで、この国では観光地などでポピュラーな乗り物だ。小回りの利く愛らしい外見とは裏腹に、運転手は法外な値段を吹っかけてくる邪悪な人間が多い。天井が低い上にサスペンションの「サ」の字も見当たらないようなその粗末な作りのせいで、座高の高いオレは終始頭を天井にぶつける羽目になる。

行き先を告げると、
「このオレに不可能があるとでも思っているのか!!? 音よりも速いスピードで行ってやるぜ!!」
的なことをタイ語で自信ありげに言ってきたので、乗車。

生ぬるい風に吹かれながら、後ろに流れ去っていく大都会の姿を新鮮な気持ちで眺めていると、柄にもなく感傷的な郷愁にも似た気持ちにふけるオレ達。


仲の良いオレ達



しかし、次第に運転手の異常行動に気付かずにはいられなくなる。スピードも落とさずに裏路地を猛然と駆け抜ける我らがトゥクトゥクの運転手は、左右をせわしげにうかがい始めたと思いきや、いきなり停車。しかし、レストランは見当たらない。すると運転手は、

「最善を尽くしたがたどり着けなかった!! とりあえず駅は近いから、ここで降りてくれや!!」

と、かけらも悪びれる様子を見せずにオレ達に言ってきた。

「知らねえんならはじめっからそう言えやーーっ!! こんなことなら絶対に乗らんかったわ!!」

と怒声を上げるオレ達。職務を果たしていないのにきっかり60バーツ要求してくる運転手に投げ捨てるように金を払い、再び路頭に迷ったオレ達は、とりあえず駅の反対側へ歩いてみることにした。

しかし、30mも行かぬうちに、なにやら物々しいデカい看板が目に入ってくる。

「SEAFOODS MARKET」

なあ、運転手よ。貴様が全力を尽くしたことくらいは認めてやってもいい。
だがこれは、サッカー選手が「オフサイドって何?」って言っているようなもんだろうが!!恥を知れ!!



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